【薬剤師が解説!】抗生剤と牛乳がダメってホント??
抗生剤と牛乳などを一緒にのむとわるいという話、聞いたことありませんか?
これは半分正解、半分間違いです。
どういうことなのかさっそく見ていきましょう。
半分正解、半分間違い
まず、半分正解というのは、抗生剤と牛乳などに含まれる多価金属カチオンがキレートをつくり、抗生剤の吸収が低下するからです。
~多価金属カチオンとは?~(化学の話ですので読み飛ばしてOKです)
『多価』とはイオン価数が2価以上のものをいいます。
例えば水素であればH+、カルシウムはCa2+で表され、この右上の「+(=1+)」(1価)と「2+」(2価)がイオン価数とされます。「2+」や「3+」など2価以上のイオン価数をもつイオンのことを『多価』イオンと呼ぶのです。
『カチオン』とはプラスに帯電しているイオンのことをいいます。
『多価金属カチオン』というと2価以上のイオン価数を持つ金属のカチオンのことで、Ca2+やAl3+などがあります。
抗生剤と牛乳などを一緒にのむとわるいという話が半分間違いであるというのは、すべての抗生剤で起こるわけではないからです。
抗生剤といっても色々な種類があります。
そのうちのテトラサイクリン系抗生剤とニューキノロン系抗生剤が多価金属カチオンとキレートをつくりやすく、抗生剤の効果が弱まってしまいます。
また、セフェム系抗生剤のうち、セフジニルは特に鉄とキレートをつくりやすく、こちらも注意が必要です。
キレートとは?
キレートとは、ギリシャ語で『挟む』という意味で、蟹の爪も意味します。
蟹の爪のように金属イオンを挟むようにして配位結合をした錯体をキレートといいます。
上記の図は簡略化してありますが、このように抗生剤が金属カチオンを挟むような形でキレートという状態をつくります。
キレートをつくってしまうと、薬が水に溶けにくい状態となってしまうため、薬の吸収が落ちてしまうのです。
その結果、薬の効果が充分に得られなくなってしまいます。
ちなみに、このキレートをつくる能力は多価金属カチオンの種類によって異なります。
一番キレートをつくりやすいのはAl(アルミニウム)です。次にFe(鉄)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)の順です。
牛乳以外にも注意するものはあるのか?
牛乳にはカルシウムが多く含まれるので注意が必要ですが、制酸剤や鉄製剤、カルシウム製剤などの薬との併用も避けた方がよいです。
制酸剤:酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなど
鉄製剤:硫酸鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、ピロリン酸第二鉄など
カルシウム製剤:乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、L-アスパラギン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムなど
金属カチオンを含む薬などを飲んでいる場合はどうしたらよいのか?
ニューキノロン系抗生剤、テトラサイクリン系抗生剤を服用する場合は、先にこれらの抗生剤を飲んでしまいましょう。
これらの抗生剤の吸収低下を防ぐためには、抗生剤を服用してから2、3時間程度あけてから金属カチオンを含む薬剤(制酸剤や鉄製剤など)を服用しましょう。
セフェム系抗生剤のセフジニルを服用した後は、鉄剤など鉄を含むものは3時間以上あけてから服用、摂取をしましょう。
ちなみに、先に金属カチオンを含む製剤を服用した場合は、腸管内に金属カチオンが長時間留まってしまうため、より間隔をあける必要があります。金属カチオンを服用後、4時間程度あけてから抗生剤を服用するようにしましょう!