【薬剤師が解説!】坐薬の保管方法ポイントまとめ! ~基剤の種類と保管温度~
案外知っているようで知らない坐薬の基剤の種類と保管方法についてまとめてみました。
ちなみに基剤とは、それ自体には薬としての効果はなく薬を製造するのに使われる賦形剤(ふけいざい)のことです。
坐薬の基剤と保管方法
坐薬は油脂性基剤と水溶性基剤に大別されます。
この基剤の種類によって保管する際の温度が異なります。
油脂性基剤
主にハードファットやグリセリン脂肪酸エステルという基剤を使用しています。
油脂性基剤を使用した坐薬は、溶け出す温度が35度前後に設定されていることが多いです。
成人の直腸内温度は37.5℃程度であり、坐薬は体温によって徐々に溶け、坐薬の中に入っている薬効成分が作用する仕組みになっています。
直射日光が当たらない安定した室温下(1~30℃)であれば冷蔵庫で保管でなくてもよいですが、夏場など気温が高い季節や場所では冷蔵庫で保管しましょう。
季節など問わず冷蔵庫保管でももちろんOKです。冷たいと坐薬が硬くなっているので、指で先端を温めると少し柔らかくもなるので挿しやすいです。
<油脂性基剤坐薬の例>
解熱・鎮痛剤:アルピニー坐剤、アンヒバ坐剤、カロナール坐剤
解熱・鎮痛・抗炎症:ボナフェック坐剤、ボルタレンサポ
便秘治療薬:新レシカルボン坐薬、テレミンソフト坐剤
痔治療薬:ネリプロクト坐剤、ボラザG坐剤
など
水溶性基剤
主にマクロゴールという基剤を使用しています。
水溶性基剤の溶ける温度は50度前後が多いです。
体温が50℃ないと溶けないというわけではありません。油脂性基剤と違って水溶性基剤は腸液(水分)で溶けて薬の効果がでるのです。
水溶性基剤は溶ける温度が50度前後と高いため、冷蔵庫ではなく室温(1~30℃)保管でよいです。
もし気になるようなら冷蔵庫保管でも問題ないです。冷蔵庫内は大抵1~5℃程度に設定されているかと思います。これは油脂性基剤の坐薬にも言えることですが、冷却口の前やチルド室、パーシャル室など冷たすぎる所には置かないようにしましょう。
<水溶性基剤坐薬の例>
鎮痛剤:レペタン坐剤
消化性運動改善薬:ナウゼリン坐剤
鎮静催眠剤:エスクレ坐剤
抗痙攣薬:ダイアップ坐剤
など
乳剤性基剤
坐薬の大半が油脂性基剤と水溶性基剤に分かれますが、その他のものとして乳剤性基剤というものがあります。
インテバン坐剤(製造販売元は帝国製薬)は油脂性基剤と水溶性基剤どちらも入っている乳剤性基剤を使用していました。インターネットで見ていたら水溶性基剤として紹介されていたりするものもあったので一応記載しておきます。
ちなみにインドメタシンが成分の坐剤はたくさんのメーカーが発売しており、メーカーごとに使用している基剤の種類が違っていたので注意が必要です。
せっかくなので各メーカーのインドメタシンの坐剤基剤について調べた結果も載せておきます。
以下の表は、2016.11.17現在の情報です。(pmdaの添付文書情報より)
乳剤性基剤(マクロゴール+ハードファット) | インテバン坐剤(帝国製薬) |
油脂性基剤(ハードファット) | インドメタシン坐剤「JG」・「NP」・シオエ・ツルハラ、ミカメタン坐剤 |
水溶性基剤(マクロゴール) | インドメタシン坐剤「イセイ」 |
坐薬が溶けてしまったら? 保管のポイント
なるべく保管するときは坐薬の先端部(坐薬のとがっている方)を下に向けて保管しましょう。
坐薬の先端部を上にして保管していたり横に寝かして保管していた場合、坐薬が溶けて再び固まると先端部や中央部分が欠けた状態になってしまいます。

上図↑のように先端部を下に向けて保管しましょう。空気は多少入るので先端を下にして保管すれば、挿し込む先端部分は溶けて欠けたりしません。挿し込む先端と逆側に空気が入っていても挿すときには問題ないので凹んでいても大丈夫です。

先ほどとは逆に、先端部分を上に向けて保管していると溶けてしまった場合、この図のように挿す側の先端部分が欠けてしまっているので挿しづらくなります。
室温で保管する場合などは先端を下に向けて保管しましょう。
溶けてしまった場合は、再固形化して利用できることもなくはないです。
しかし再固形化した場合、使用時の溶け具合が異なったり、再固形化した場合の薬がきちんと作用するのかなどのデータはほとんどないようなので、基本的には溶けてしまっていたら新しいものを使用しましょう。
特に小児などで1/2にカットして半分だけ使う場合などは再固形しての利用は避けた方が良いでしょう。坐薬が溶けていない状態では均一に薬が混ざっていますが、再固形化した場合は薬が均一であるかどうか分かりません。一部に偏ってしまっている可能性も考えられます。
冷蔵庫などで適切な温度で保管していれば、坐薬を上向きでも下向きでもどの向きで保管していても問題ありません。
まとめ
なんだか基剤とかいう少し難しい話もでてきましたが、坐薬の保管は先端部分を下に向けて保管する、直射日光が当たらない1~30℃の室温もしくは冷蔵庫で保管、これさえ分かっていれば問題ないです。
まとめるとかなり短いですが…笑
この記事がみなさまの参考になれば幸いです。